WCAN 2009 AUTUMN レポート

画像 : WCAN 2009 AUTUMN

10月10日にWCAN 2009 Autumnがありました。今回はiPhoneやHTML5、ブランディングなどの様々なお話を聴くことができました。
会場はいつもの名古屋国際会議場で。同日に他のセミナーもあったらしく、参加人数はいつもよりは少ない感じの120名程度でした。

[SESSION-1] 80カ国に広がる世界スタンダードiPhoneが生み出したモバイルWebの世界
林 信行 さん (nobilog2)

書籍mactopia JapanのApple’s EyeITmedia +D等への寄稿などで幅広く活躍されているITジャーナリスト林 信行さんによるiPhoneについてのセッション。iPhoneの特徴や世界的な立場などの説明から、iPhoneをWebから攻めるためのアプローチを考察されました。

まず、会場でiPhoneを持っている人に手を挙げてもらったところ、今回は約6割の方が手を挙げました。もうまわりはみんな持ってるよiPhone。林さんによるとiPhone 3GS発売後半年たっても未だに売れ続けているそうで、ソフトバンクの携帯電話の出荷数の45%くらい[1]がiPhoneでは、とおっしゃっていました。ソフトバンクに新規契約する半数くらいがiPhoneユーザでは、とも。

新規拡大市場

同時に、現在スマートフォン市場も徐々ににぎわってきており、5人に1人がスマートフォン所有しているという調査結果もでています。
このような賑わいを見せ始めた日本のスマートフォン市場では、やはりiPhoneが目立っているそうです。

ちなみに、海外の方がiPhone市場は拡大しており、例えばこれからiPhoneが発売される中国においては、まだ発売にもなっていないのに、すでに100万台ほどが国内で流通している、という調査もあったそうです。

WEB 2.0 in your pocket.

iPhoneによって、インターネットはより身近になりました。そこで林さんが提唱するのが「WEB 2.0 in your pocket.」です。たとえば、ポケットに入っているiPhoneをとりだして、

  • 近くの居酒屋をさっと探す
  • 冷蔵庫の余り物をGoogleでさっと検索する
  • Twitterの存在で、さまざまな情報が1つのタイムライン上から入ってくる

などなど、iPhoneなどの携帯電話の進化によって、生活とWebの距離がぐっと近くなり、(いわゆる流行った2.0ではなく)これからのWeb=Web2.0は、ポケットの中に入っている、ということだそうです。とても興味深い考え方だと思います。
このように、ITの主戦場はパソコンから携帯電話へうつっているため、今後は、日本のWeb業界もスマートフォン市場に備えよう、と提案されました。

Webからの視点でiPhoneを攻める

続いて、Web的なアプローチでiPhoneをみると今後どのような点に注目すべきかと説明されました。ポイントは2点あると思いました。

  1. Webな人がよりApp Store市場に乗り込みやすくなる
    • Flash Professional CS5でiPhoneアプリ開発が可能に
  2. iPhone, Android, Plam Pre…すべてWebKitを搭載!
    • 海外のニュースサイトがiPhone対応したらアクセス2倍になった(ちなみに専用アプリだしたら10倍になった)
    • HTML5によるWebアプリケーションは、スマートフォンでのWebKitにおいて先行して実装されていく
    • Google IO: Day Iで「HTML5でFlashは不要になりつつある」論

つまり、Webな人は「WebKitとHTML5(Flash CS5)、要チェック!」ってことですね。また、今後より実装・実例が増えていくであろうWebアプリケーションをどう成功させるかというお話でAARRR!: 5-Step Startup Metrics Modelが紹介されました。
そして、まとめとして以下の3点を挙げられました。

  • iPhone向けのWeb最適化をはじめてAndroidにも備えよう
  • HTML5やFlash CS5を使って、21世紀のゴールドラッシュを狙え
  • Analyticsから改善のループをつくろう

このように大きな魅力をもったiPhoneですが、いざどこがをきかれるとiPhoneの魅力は1人1人で使い方が違うので説明しにくいんです、とおっしゃっていたのにはiPhoneを人に勧めたことのある人なら同意できるのではないでしょうか。笑

質問してみた

質疑応答時間があったので、「日本のケータイがiPhoneから学ぶべき事は?」と気になっていたことを質問しました。
回答をまとめてみると、

  • ケータイの本来の値段がわかって買い控えが加速したが、一方Appleは新たな「しぶといビジネスモデル」を展開した
  • iPhoneはキャリアとメーカーのパワーバランス(メーカーがキャリアに携帯の販売権を売る形)を逆にした
  • メーカー・キャリア共に一度立ち止まって、息が長いビジネスモデルを考えよう

ということでした。メーカはキャリアからの脱却が必要だけど・・・ううーん、難しい。ちなみに懇親会で数名の方にあの質問ヨカッタと言われて、僕も質問してよかったです。

[SESSION-2] 60分でできる! 実践 HTML5 & CSS3 ウェブサイト
菊池 崇 さん (Web Directions East)

菊池さんによるHTML5とCSS3についてのセッション。HTML5の概念をわかりやすく説明してくださいました。個人的にはHTML5策定の背景についての裏話?が大変おもしろかったのでこれをとりあげます。

まず、Google Trendでみると日本での「HTML5」のキーワード検索が他国に比べて飛び抜けていると紹介されました。また、HTML5は2010年9月に勧告[2]とあるのですが、これはある意味W3Cのおどしのようなもので、本心は「フィードバックがほしかったから」ということらしいです。
参考リンクの位置が適切でなかったので修正しました。

HTML5の背景

続いて、HTMLとXHTMLの歴史の説明のあと、HTML5が生まれた背景についてお話されました。生まれた理由をまとめると、

  • ブラウザのパーサの問題
    • IEがHTMLパーサしかもっていない(他のブラウザはHTMLパーサとXMLパーサを持ってる)
  • エラーの扱いの問題
    • Top500サイトは93% invalid
    • XHTMLのエラーにもいろいろある:<img src=logo.png alt="" /> とか <img src=’logo.png’ alt=” /> とか <img src="logo.png" alt=""> とか・・・
  • 幸いIEのHTMLパーサはDOMをサポートしていたので、DOMを基本として、DOM使って色んなAPIと連携できるものを作りましょう

おい、またIEかよ。このように、HTML5は「DOMを基本としてて、DOM使って色んなAPIと連携できる」ことが特徴であり、これによってHTML5はアプリケーションになる!と説明されました。つまり、HTML5 = Web Forms2 + Web Application 1.0であるとおっしゃいました。

HTML5をつくる

より実践的なお話として、XHTMLの書き方をHTML5に変換しながら新しい要素や概念を説明されました。

Doctype
Doctypeのミスをなくすために簡単にした。ただ、なくすとIEが互換モードになっちゃうので<!DOCTYPE html>だけ残した[3]
charset
これも難しいので<meta charset="UTF-8">だけにした。
Sectioning Content
新しいコンテンツモデル。基本的にSectioning Contentには見出しをつけましょう。

さらに、以下の点も参考になりました。

  • 空要素は閉じても閉じなくてもOK
  • 新要素article:それ単体で読んで、理解できるもの
  • 役割が変わったsmall:著作権をマークアップするときに使う
  • imgのaltは必須じゃなくなった
  • バリデーションはValidator.nu

また、CSS3については、「これまでCSS3はお遊びに過ぎなかったが、実践の時がきた」として、text-shadowやgradient、webkit-transition、レイアウトモジュールのデモなどを実演していただきました。

[SESSION-3] Webディレクターとしての経験密度とWebブランディング
名村 晋治 さん (Webディレクションやってます blog)

名村さんのWeb業界を生きていくための方法論Webに関わるひとのあり方のセッション。だと思いました僕は。

今回のアジェンダは「ディレクターの困ることと解決方法」として以下のようなものでした。大変密度が濃く、名村さんの言い声で熱く語られているのを聴いているだけで「がんばらないとな」という気持ちがふつふつを沸いてくるようなお話でした。半年に一度くらいこのお話を聴きたい。

  • 経験を仕事に使えるように結びつけていく
  • 思考を可視化していく
  • ディレクターの考えるWebブランディング
  • 「Webブランディング」を提案要素にする

まず、ディレクターの困ることの解決方法を真剣に考えてみましょう、とのことで、具体的な問題とその解決法を以下のように説明されました。ちなみに「考える」とは「答えを出す活動」だ、とおっしゃっていたのも印象的でした。

価格設定で迷う
基準を決めていきましょう
デザインがいつまでも決まらない
決定権をクライアントサイドに与えすぎでは? ケツを決めて提案する。先までの流れを考えて、自分の役割を決めていくことが重要
やりたいことがではなく「会社として得なこと」をやらされている感がある
青島くんではないけど「やりたいことをやりたければ偉くトップになれ」独立しましょう

そして、こういった解決方法を生み出していくには「経験」によるところがあり、日々の経験を自分にきちんと結びつけていく考え方をしましょうとおっしゃいました。お話の中では、

  • 「情報」と「経験」をつなげられていないから「使うことができる」形になっていない
    • 経験を結びつければ加速する
    • 得られた経験から次へ得られる情報は倍加していく
  • 「情報に変える」習慣をつける
    • 起きている間、目に入っているものをすべて情報に変えること、をまずは「10分」から始める
  • どういう思考をすれば「情報」になるか
    • 5回の「なぜ?」や物事の存在理由の言語化を実践

などなど。ここでは内容のほんの一部しか紹介できていません。このような常に「考える習慣」を身につけることによって、次第に解決方法を出せるようになってくる、と説明されました。それにはブログなどの文字に落とすことが重要だとし、経験を自分の血肉に「意識して」変えていくことが重要であるとまとめられました。

続いて、「Webサイトを捉える根本的な指針の1つ」としてのWebブランディングのお話になりました。まず「楽天やAmazonのロゴが描けますか」と会場に問いかけ、「ロゴは描けなくても何をやっているかはわかりますよね」とWebは(ロゴなどの見た目とかじゃなくて)サービスを訴求しなければならない、と提起されました。

そして、WebブランディングはWebだけでできることではないとして、ブランディングの基本は「お礼」であり、決して大規模サイトのみに当てはまるのものではないと説明されました。「WebサイトをWebだけで考えていると 失敗する時代である。」というフレーズはすごく印象に残っています。

ここからは、お客さんにWebブランディングの重要性を説く名村さんのスクリプトトークでした。まさに「ずっと名村さんのターン!![4]」という感じでした。ぜひ公開される?スライドを読んでいただきたいなぁと思います。
いやぁ、心にしみました・・・半年に一度くらいこのお話を聴きたい。

懇親会

いつもの山ちゃんで。林さんに質疑応答で質問した件についてもう少し突っ込んだお話をすることができました。大変満足でした。

また、Twitter経由で知ってすごくファンになったほのぼのとした奥さんとの絵ブログの中のひとと実は向かいの席だった、ということが終わりがけに発覚した、とかありました。

就職先が決まってから、随分Webのセミナーにでても自分の(したい)仕事と結びつけて考えるようになったなぁと思います(いいことかどうかは置いといて)。名村さんのお話をきいたりして、こういう考えた経験もそのうち身になっていくのかなぁと漠然と感じた勉強会でありました。

  1. 注:データの時期によりますが [back]
  2. 参考:HTML5の完成は2022年!? | Web標準Blog | ミツエーリンクス [back]
  3. ちなみに、XHTMLのDoctypeを見ずに書ける人は会場には一人もいませんでした。 [back]
  4. 参考:ずっと俺のターンとは – はてなキーワード [back]

“WCAN 2009 AUTUMN レポート” への 4 件のフィードバック

  1. 名村です。

    ブログにこのように書いて頂けてとても光栄です。あの場でも話をしましたが、そうは言っても名村も沢山失敗をしています。
    その失敗からなんとかかんとかもがいてもがいて自分なりに見えてきた事の一例として話をさせて頂きました。

    先日の話ではWebブランディングの話はいらなかったかもしれませんね(汗
    前半の部分をもうちょっとゆっくり話をしているだけで良かったような気もしています。
    相変わらずの早口でスンマセンでしたw

  2. >名村さん

    コメントありがとうございます!
    失敗から得た・学んだことって、知識以上の「知恵」だと僕は思っていて、名村さんのような方のそういうお話を言葉で聴くことは貴重だなぁと思うのです。

    >相変わらずの早口でスンマセンでしたw
    確かに内容に講演時間が伴ってなかったかもしれませんね。
    メモれるようにしゃべる(スライドを用意する)と、話に集中しなくなりがちで、熱く話すとそのとき色々考えても後日忘れてしまいがちですよね・・・なので定期的に今回のスタイルで講演していただければ最高だ思いますです!笑

  3. 当日は、ご来場を頂きまして有り難うございました。また、詳細なレポートをありがとうございます。またご質問などありましたら御遠慮なくお願いいたします。

  4. >菊池さん

    こちらこそ大変興味深いご講演ありがとうございました。
    特にHTML5についての経緯は、仕様書などからはわからないことですので貴重なお話を聞くことができました。

    >またご質問などありましたら御遠慮なくお願いいたします。
    ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
    HTML5やCSS3の話題は紹介の文献こそ増えてきていますが、その分追わなければいけない情報が多くてなかなかオンタイムでついて行くのが難しいなぁというのが本音です・・・がんばります。

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